月を見つけた帰り道

🍃~月を見つけた帰り道~  余白の駅

 

#61 月を見つけた帰り道

今日も一日が終わった。

特別な出来事があったわけでもない。

大きな失敗もなければ、大きな成功もない。

そんな、ごく普通の一日だった。

家へ向かう帰り道。

何気なく歩いていると、前から来た小学生くらいの男の子が急に空を指さした。

「お母さん、月!」

その声につられて、私も空を見上げる。

そこには、静かに浮かぶ月があった。

細く光る月。

まだ夕暮れの青さが少し残る空に、ぽつんと浮かんでいる。

毎日そこにあるはずなのに、今日はじめて見つけたような気持ちになった。

忙しい日は、足元ばかり見て歩いてしまう。

明日の予定。

今日の反省。

仕事のこと。

頭の中はいつも忙しい。

だから空を見ることを忘れてしまう。

でも、月は何も変わらずそこにいた。

昨日も。

一昨日も。

きっと明日も。

急ぐこともなく。

競うこともなく。

ただ静かに夜空を照らしている。

私は思った。

人も、月のようでいいのかもしれない。

誰かと比べなくてもいい。

毎日同じように見えてもいい。

静かに、自分の場所で光っていればいい。

帰り道は、朝とは違う。

今日という一日を終えた自分が歩く道だ。

だからこそ、ほんの少し空を見上げるだけで、一日の終わりが優しくなる。

月は何も話さない。

でも、「今日もお疲れさま。」

そんな言葉を、静かに届けてくれているような気がした。

私はもう一度月を見上げて、小さく笑った。

そして、少しだけ軽くなった足取りで、家へ向かって歩き始めた。


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お読みいただき、ありがとうございました。

忙しい毎日の中で、この数分だけでも心を休める時間になっていたら嬉しく思います。

「余白の駅」は、慌ただしく過ぎていく日常の中で、少し立ち止まり、自分の心と向き合うための小さな駅です。

また次の駅で、お会いしましょう。

夜風


⑨ 次回予告

第62話

「明日は今日より少しだけ軽くなる」

昨日より頑張らなくてもいい。
少しだけ肩の力を抜いて迎える明日は、きっと今日より軽やかに歩き出せるはずです。焦らず、自分の歩幅で進むことの大切さを綴ります。

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