🍃~お気に入りの場所が一つあるだけでいい~ 余白の駅

#63 お気に入りの場所が一つあるだけでいい
誰にでも、なぜか落ち着く場所があると思う。
有名な観光地でなくてもいい。
きれいな景色が見える場所でなくてもいい。
近所の小さな公園でもいいし、いつもの喫茶店でもいい。
駅のホームの端にあるベンチかもしれない。
自宅の窓際に置いた椅子かもしれない。
そこに行くと、なぜか少しだけ心が静かになる。
そんな場所が一つあるだけで、人は案外救われるのかもしれない。
私にも、そんな場所がある。
特別なことをするわけではない。
座ってコーヒーを飲む。
ぼんやり外を見る。
時々、スマートフォンさえ見ない。
ただ、そこにいる。
それだけなのに、忙しく動いていた頭の中が少しずつ静かになっていく。
人は疲れると、「何かしなければ」と考えてしまう。
気分転換をしよう。
旅行へ行こう。
美味しいものを食べよう。
新しい趣味でも始めよう。
もちろん、それもいい。
でも、本当に疲れているときに必要なのは、何かを増やすことではなく、何もしなくていい場所なのかもしれない。
お気に入りの場所には、不思議な安心感がある。
誰かに説明する必要がない。
「なぜそこが好きなの?」
と聞かれても、うまく答えられないこともある。
景色が特別なわけでもない。
料理が特別おいしいわけでもない。
便利な場所でもない。
それでも、好きなのだ。
理由なんて、それで十分なのだと思う。
考えてみれば、人との関係も少し似ている。
一緒にいて楽しい人も大切だけれど、何も話さなくても落ち着ける人もいる。
沈黙が気まずくない。
無理に笑わなくてもいい。
格好をつけなくてもいい。
そんな人のそばにいると、心が少し休まる。
場所も同じなのだろう。
「ここでは頑張らなくていいよ。」
お気に入りの場所は、そんなことを言ってくれているような気がする。
毎日は、思っている以上に忙しい。
仕事。
家事。
人付き合い。
予定。
連絡。
スマートフォンを開けば、知らなくてもよかったことまで次々と目に入ってくる。
気がつけば、一日中、何かに反応している。
だからこそ、自分から何も求められない場所が必要なのだと思う。
そこへ行けば、少しだけ自分に戻れる。
深呼吸をする。
温かい飲み物を一口飲む。
空を見る。
風を感じる。
そして、
「まあ、いいか。」
と思える。
その「まあ、いいか」が、意外と大切なのかもしれない。
人生には、すぐに答えが出ないことがたくさんある。
考えても仕方がないこともある。
そんなとき、無理に答えを探さず、お気に入りの場所へ行く。
しばらく何もしない。
すると、問題そのものは何も変わっていないのに、自分の中の重さだけが少し変わっていることがある。
だから私は思う。
お気に入りの場所は、たくさんなくてもいい。
一つあればいい。
疲れたとき。
少し考えすぎたとき。
誰とも話したくないとき。
そこへ行けばいい。
そして何もせず、少しだけ座っていればいい。
また歩きたくなったら、立ち上がればいい。
そんな場所を一つ持っているだけで、毎日は少し優しくなる。
今日も、その場所はきっと変わらずそこにある。
急かすこともなく。
答えを求めることもなく。
ただ静かに、自分が戻ってくるのを待っている。
お気に入りの場所が一つあるだけでいい。
それはきっと、自分の心に小さな「余白の駅」を持っているということなのだと思う。
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🍃 明日は今日より少しだけ軽くなる

🍃 ベンチに座る五分間

お読みいただき、ありがとうございました。
忙しい毎日の中で、この数分だけでも心を休める時間になっていたら嬉しく思います。
「余白の駅」は、慌ただしく過ぎていく日常の中で、少し立ち止まり、自分の心と向き合うための小さな駅です。
また次の駅で、お会いしましょう。
夜風
⑨ 次回予告
第64話
「今日も自分なりによく歩いた」
誰かより速くなくてもいい。昨日より遠くへ進めなくてもいい。一日の終わりくらいは、自分に「今日もよくやった」と言ってあげてもいいのではないでしょうか。そんな、自分を少しだけ認める時間を綴ります。