帰りの電車だけで思いだすこと
仕事が終わって、
電車に乗る。
朝と同じ場所のはずなのに、
帰りの電車は少しだけ空気が違う。
みんな静かで、
窓に映る顔も少し疲れている。
スマホを見ている人。
目を閉じている人。
ぼーっと外を眺めている人。
一日を終えた人たちが、
それぞれの場所へ帰っていく。
不思議なのは、
昼間には全然思い出さなかったことを、
帰りの電車の中で急に思い出すことがある。
昔の会話。
子どもの頃の景色。
もう会わなくなった人。
なぜか、
駅と駅の間で、
ふっと頭に浮かんでくる。
たぶん、
昼間は考える余白がないんだと思う。
やること。
返事。
時間。
予定。
ずっと何かに追われている。
でも帰りの電車だけは、
少しだけ「自分」に戻る時間がある。
窓の外を流れていく街を見ながら、
今日のことをゆっくり整理している。
うまくいったことより、
小さな疲れの方を思い出したりする。
でも、
それでいい気がする。
帰り道って、
頑張っていた気持ちが少しほどける。
誰にも見せていない疲れが、
静かに表に出てくる時間なのかもしれない。
電車が駅に着く。
ドアが開く。
また人が流れていく。
その流れの中に混ざりながら、
今日もなんとか終わったんだなと思う。
帰りの電車には、
昼間には出てこない気持ちがある。
だからたまに、
少しだけ好きになる。